美術のポリティクス ー「工芸」の成り立ちを焦点としてー  北澤憲昭



 
女子美術大学教授でもある北澤先生の著書、
境界の美術史、日本画の転位、反覆する岡本太郎、
などでもご存知ですね。
 
第一章 「美術」の形成と諸ジャンルの成り立ち
第二章 美術とナショナリズム/ナショナリズムの美術
第三章 工芸とアヴァンギャルド「日本社会における造型のミーム」






美術の階層秩序
美術に属する諸ジャンルのあいだには階層的な秩序がみとめられる。
広辞苑で「美術」の項を引いてみると、その内容として、
「絵画・彫刻・書・建築・工芸美術など」とある。
この順序は、けっして恣意的に決められたものではない。
「絵画」を筆頭に据え、次位に「彫刻」を置き、「工芸美術」が最も、
下位にくるという並びは、価値の序列を示していると考えられる。
現在、アヴァンギャルドは、美術のセントラルな領域を占領し、
絵画や彫刻という近代の代表的ジャンルをはるかに凌駕する勢いを有す。
「絵画」を頂点とする「美術」概念の成り立ちを検討することは、
現在を見極め、今後の方向を探求するために欠くことのできない基本的作業である。

 

美術史の対象とは、記述対象となる時代の一貫性では断じてなく、
まさにその「力性」なのであって、そこでは、あらゆる方向への運動、
張力、決定要因が織りなすリゾーム、作動するアナクロニズム、
和らげようのない矛盾といったものが前提となっている。