織と文  志村ふくみ


織と文 志村ふくみ


重要無形文化財保持者「紬織」
染織家志村ふくみ先生の作品と随筆集です。


僕が初めて先生の作品を見たのは18歳の時でした。
染織の世界の技術、技法、見所もわからない時でしたが、
先生の作品を見た時は惹き付けられたました。


「回帰」と題された作品です。
 
 

この本は先生の多数の作品と共に、その時の作品を制作するにあたり、
想い描いていた情景やヒントとなった言葉が綴ってあります。

作品「月の象徴」「マルコ」の項では、
絵具がねころんでしまう。と岡田兼三先生の言葉と対談します。
 
 
「一つの迷いが解けたら、二つの迷いが待っている。歩くということは、迷いをより多くもつことではないかな、と思う。何か掴みたいけど、どんどん奥へ入ってゆく感じ、キリがない。これでいいってこともない。かくあるべきだってこともない。単なる決断、努力では何も掴めない気がする。油断すれば絵具がねころんでしまうからね、とくに昨日から今日に続くところを、昨日の技術に任せておいたら、絵具がパタンとねちゃうんですよ。今日というものをしっかり持たないと、絵具が死んじゃうような気がします」

「てさぐりしていて、手探りするには時間がかかるんです。毎日すごしていますと、その間にいろんな思いが浮かんでくる。それを絵に入れてはいけないんです。というのは、出発点の時、少しぐらい欠点があっても、それをそのまま仕上げないとダメだと思う。私は途中で浮かんできたことは、次の絵に描くことにしています。悪いところは、悪いままみてもらうしかない気がします。制作中はできるだけ考えない、絵と絵をかく間は考えてもいいけど、絵をかく時には、できるだけ考えるな、といいきかせてるけど、それが考えるんです。最初に思ったことを最後まで突っぱることだけが大事なんです」
と。


僕がこの本を初めて手にしたのが20歳の時でした。
その時、人間国宝の先生達は僕にとってとてつもなく遠い存在で、完璧で、最高で、
作品に近づくと自分は脆く崩れていく感覚におちいってました。
でもこの本を見て、読んで、ああ先生方も色々考えて、試行錯誤して、葛藤して作品を創られてるんだなと、想った記憶があります。

作品の裏付けや想い、なかなか見ること、読むこと、できません。
この本で先生との距離が近くなればいいな〜といつも想ってます。